ゲーム開発を通じて学んだ開発と経営の共通点について
任天堂製品好きな crist18 です。
個人的な話をしよう。
僕は、なぜだか分からないがGC派だった。 もちろんPS2も遊ぶ。RPGが大好きだったから。
でも、GameBoy AdvanceとGameCubeも手放せなかった。 なぜ、どうして僕の心を惹きつけて止まなかったのか。 それは今でも分からない。
ファイアーエムブレム烈火の剣、タクティクスオウガ外伝、黄金の太陽、 カービィのエアライド、テイルズオブシンフォニア、ピクミン2、 メイドインワリオ、スマブラDX、バテン・カイトス、パックマンVS ゼルダの伝説 4つの剣、ポケットモンスター ルビー・サファイア、 RUNEⅡ、逆転裁判Ⅱ、新約聖剣伝説、ZERO ONE SP…
夢中になって、貪るようにして遊んだ。
そして、このゲームにはどんな想いが詰まっているんだろう? どんな風に発想したらこんなゲームが出来るんだろう?
…と疑問を持つようになり、結局ゲーム開発者を目指すことになった。
意識的にゲームを作りたいと自覚したのが高校三年生の夏。 「受からんかったら任天堂のデバッグ行くわ」と背水の陣で受験に望んだ冬。 そして、大学一回生の春、一度だけ岩田社長のお話を聞く機会を得た。
その時の話をしたい。
ゲーム開発を通じて学んだ開発と経営の共通点について 岩田 聡 1976. 高校時代コンピュータに興味を持つ。電卓でゲームを作る 自分の作ったもので他の人に喜んでもらうことがエネルギーに 情報がないので自分で試行錯誤するしかない → 仮説思考が身についた! 未知の問題に対応する経験 (これが今後重要になる) 1982. HAL研に入社 1983. ファミコン登場。任天堂の人に「6502のプログラムがかけるからファミコンのプログラムをやらせてくれ」と掛け合ったところ開発機材までもらう どんどん商品開発を行う 先輩がいなかったのでトップランナーになる 2, 3人で2, 3ヶ月でつくったものが数百万本売れる → 1人の若い社員が全体を見渡せる! 1985. スーパーマリオブラザーズ登場。 開発環境が良くなる → 市場が大きくなり、商品の規模も大きくなる チームが大きくなると、人の意識を揃えることが困難に 開発者は個性が豊か。そもそも「クリエーションはエゴの表現」 → 組織マネジメントの問題が浮上 技術的な制約がゆるくなると、やりたいことの実現可能性は上がる でも、開発資源(人材、時間、予算)は有限 → 「やりたいこと」と「やれること」のバランスが崩れ「やるべきこと」が正しく判断できなくなっている ゲームは娯楽。何が楽しいのか…? ビデオゲームは実用品でないため事前に完全な設計ができない 良い意味で人に驚いてもらう仕事 → 有限の開発資源を活かすため、優先度を調整していくことに挑戦 1988. 宮本さん vs 岩田さん プログラマの視点からデザインを観察してみた チームにより強みと弱みが違う。宮本さんはそれを見ていた。 宮本さんはチームが何ができるのかを見つめていた → 宮本さんはチームの強みを活かすことを軸にしていた 商品に対する目線の違い 何も知らない人にゲームをしてもらい、肩口の視線が生み出す客観的な評価に基づき、判断する方法論 → 宮本さんはユーザービリティをずっとまえから実践していた ハル研の経営危機 バブルの影響もあり、ハル研も悪いサイクルに陥っていた 経営のことを知らない岩田さんの取り組み 面談の価値 今まで面談に時間を割けなかった 一人一人と話をしていろんな発見 → 個人面談を軸にする方法の確立 山内さんとの面会 「ソフト主導の娯楽ビジネス」の特殊性 ハードは仕方なく買うもの 娯楽品は我慢して使わない どんな商品も必ず飽きられる 驚きが最も大切 市場調査は無意味 (おどろくことは何ですか? と客に聞いてどうする!) 独自性の重要性 同じ軸で勝負 → すぐに価格競争になる だから人と違うことが重要 フォーカスの重要性 大切なことはめっちゃ大切に、いろんなものを追うことはやめる → 判断の方法: 独創、フォーカス視点 がコアな考え方に 開発者として話を聞いたが、それが経営判断にそのまま応用できることに気付く (42歳で社長!) 有限の資源 資源とは人材、予算、時間 → 多い方がいいが有限の中で最高のモノを作ることが大切 優先度を明確に 「やりたいこと」から「やるべきこと」を見る → 「やるべきこと」明確な優先度が大切 強みを活かす チームの強み弱みを的確に理解して強みが生かせるように弱みが表面化しないように優先度を決めることが大切 マネージメント 自分たちの強み弱みを理解した上でやるべきことをしぼりこむ 組織とは 1人ではできない大きな目的を持ち味の違う様々な人が集まって、 それぞれの強みを出し合って協力し合う仕組み 昔: 自分がもう2, 3人いればなあ… 今: 面談をふまえて、特性を大切に 人材のマネジメント 個々に価値観や適性が異なる。どうやって尊重していくのか → 得意なことをすると苦労の割に周囲が高く評価してくれる それで元気になることが多い! → そこにご褒美を貰ったらもっとやる気出る! 得意! チームの中のほとんどの人は自分で仕事が選べない → ゴールが明確で、自分たちが今どこにいるのか、なぜ自分がその仕事を担当しているのか、それが分かると元気になる! 面談で発見することの多さに驚いた → 面談の継続が多面的視点や訊く力の養成につながる 全体最適と部分最適 プログラムの性能はごく一部の「ボトルネック」で決まる それは組織も同じ。 → 部分最適しつつ全体も見渡す。どう解決していくか…? プログラムと似ている 独創性・柔軟性 娯楽産業だからこそ世の中の環境の変化への対応がより必要に → 「よそと違うことをやれ!」 山内からの「任天堂のDNA」 → ブルーオーシャン戦略を実践していた どんなものも飽きられる 同じアプローチ・・・成功は保証できない → 柔軟に対応できなければ、たちどころに没落。常識をうたがえ! アイデアとは 開発はトレードオフの問題に直面する。あちらを立てればこちらが立てない 「アイデアとは複数の問題を一度に解決するもの」 (宮本さん) 視点を動かす、一度に複数の問題が解決できる視点を探し出す 岩田さんのアプローチ 常識:「ゲームは子供、男性向き」 アプローチ:「どうして? もっとやってこうよ!」 → 任天堂の戦略、常識を疑え!
以上が、その当時のお話の内容である。
7年前は頷くばかりしか出来なかったけれど、社会人になった今見返してみると、 すごく大切で本質的なことに触れられていたことがわかる。
雑誌で読んだ沢山の記事も忘れられない。
「TVってすごいなと思うんです。一家に一台置いてあって一日一回チャンネルをつける。 ゲームもそんな風に生活に密着したものに出来ればいいなと。TVを付けるくらい自然なハードを」
その記事を読んだ数年後、Wiiは世界中に広まっていた。
苦境でも怯まず独創の道をゆく姿は、間違いなく業界を引っ張るリーダーだった。
岩田さんのご冥福を心よりお祈りします。